2017年

10月

17日

スタチン服用と骨折リスクについて

昨年9月中旬に母が転倒して臀部を打撲し、一時は要介護4状態となったものの、幸いにも打撲だけで済んだため、今ではデイサービスに通えるまで回復した。今年8月にも再び転倒してしばらくデイサービスを休んだが、それも打撲だけですんだ。たまたま母の服用薬中にローコール(フルバスタチン)があったことから、以前、スタチンが骨折リスクを減少させるとの情報を聞いた記憶が甦った。

そんなわけでブログを1年間休止した後の話題は「スタチンと骨折リスク」についてで、以下の3論文を概観した感想。

1) Statin use and risk of fracture: a meta-analysis, Int J Clin Exp Med, 2015, 8, 8269-75.

2) Statin therapy and risk of fracture: results from the JUPITER randomized clinical trial, JAMA Intern Med, 2015, 175, 171-7.

3) Effects of bone mineral density and fracture risk: a PRISMA-compliant systematic review and meta-analysis, Medicine, 2016, 95, e3042.

 

  1)20042014に発表された17論文、22試験(19万人弱)についてのメタ分析。全試験について解析すると、スタチン使用は骨折リスクを減少させていたOR=0.80; 95%CI, 0.73-0.88; P<0.00001。試験デザインが症例対照研究だけの8試験では、OR=0.67; 95%CI, 0.55-0.87; P<0.0001、コホート研究の14試験では、OR=0.86; 95%CI, 0.77-0.97; P=0.02、女性についてのサブグループ解析では、OR=0.76; 95%CI, 0.63-0.92; P=0.005となった。フォローアップ期間が5年以上のサブグループ解析では、OR=0.67; 95%CI, 0.54-0.82; P=0.0015年以下では、OR=0.85; 95%CI, 0.74-0.96; P=0.01、サンプル数が1万人以上では、OR=0.65; 95%CI, 0.54-0.78; P<0.000011万人以下では、OR=0.85; 95%CI, 0.77-0.94; P=0.002であった。

 

  2)は、クレストール(ロスバスタチン)の心血管イベント予防効果を調べた大規模臨床試験(JUPITER)の結果を再解析したもので、17802人(hs-CRP>2mg/L50歳以上の男性と60歳以上の女性)の最大追跡期間5年の二重盲験プラセボ比較対照試験。クレストール投与群の追跡期間での骨折件数は221、プラセボは210で、調整HR=1.06, 95%CI 0.88-1.28, P=0.53となり、ロスバスタチンは骨折リスクを減少させない。

 

 3)は、スタチンの骨密度あるいは骨折リスクへの影響を調べた無作為化比較試験について、20155月までに発表された論文を調査した。条件に合致したのは骨密度への影響が5試験(1062人)、骨折リスクが2試験(26816人)で、これらをメタ分析した結果、スタチンは骨密度を有意に増加(0.03g/cm2、追跡期間1-1.5年)させた(95%CI:0.006, 0.053; I2=99.2%; P<0.001)が、骨折リスクには影響なかった(HR=1.00、追跡期間5-6年)(95%CI:0.87, 1.15; I2=0; P=0.396)。

 

 結局、3論文をザックリと纏めると、スタチンは骨密度を増加させる一方、骨折リスクの減少は観察研究レベルでは認められるものの、無作為化試験レベルでは未だ証明されていないといったところか。