2016年
8月
22日
月
前回、「グリナ」を例に機能性表示食品の機能の根拠とする論文を評価してみた。しかし、「グリナ」だけを取り上げて機能性表示食品全体を云々するのもどうかと思ったので。今回は最終製品を用いた臨床試験により機能性を評価している36品目(消費者庁データベースで検索すると8月現在40品目だが、調査は届出番号A1~310に限定)を調べた。36品目は全届出品目の11.6%に相当する。
この36品目の“有識者向け公開情報(機能性情報)”に添付された根拠論文を調べ、臨床試験の研究デザイン別にまとめたのが表1である。意外にも最もエビデンスレベルの高い無作為化二重盲験プラセボ対照試験によるものが最も多く、24品目(67%)を占めた。「グリナ」の単盲験クロスオーバー試験は少数派であった。エビデンスレベルの高いデザインの採用が多かったものの、無作為化や二重盲験をどのように担保したのか論文中の記載が不十分なものもあり、雑誌のグレードも様々だが、これについては今回述べない。
今回の調査でわかった問題点として指摘したいのは、ひとつの根拠論文が複数の品目の資料に使われていること。こうした重複を除くと36品目の根拠論文数は28となった(表1)。重複のあった機能性関与成分は4種で、これら各成分の製品名、届出者名を表2に挙げた。根拠論文の著者の所属と機能性表示食品としての届出者が一致する場合はセルを黄色にしてある。つまり届出企業が臨床試験を実施して論文をまとめ、届出者となっている場合で、これについては納得できし、問題は無い。
不思議なのは黄色セル以外の届出者の製品の届出情報、“有識者向け公開情報(機能性情報)”に同じ根拠論文が掲載されていること。更にはそのような場合の“機能性情報”のチェック欄、臨床試験で用いた試作品と最終製品との同一性について届出資料で考察されているか、にチェックが入り、記載のある場合があることだ。
具体的に言うと、葛の花由来イソフラボンの「メディスリム(12粒)」、「同(4粒)」は、“東洋新薬”所属の著者名が確認出来る根拠論文(Biosci. Biotechnol. Biochem., 76. 1511-17, 2012)が“機能性情報”に添付されているが、この同じ論文が「ヘラスリム」、「葛の花サポート」の“機能性情報”にも添付されている。しかし、この2品目の届出者は著者の所属としても、材料などの提供企業としても、論文中のどこにも記載が無い。因みに、根拠論文が重複していない24品目の論文著者の所属と届出者との関係も調べてみたが、22品目で届出者と論文著者の所属に一致が認められ、残りの2品目では論文中に届出者名が被験食品提供企業として確認できた。
「葛の花サポート」では更に最終製品との同一性についても、その他の社と同一の考察を記載している。なお、届出企業が同じ製品の規格違い製品で最終製品との同一性について考察していない場合があるが(「メディスリム(12粒)」、「メディスコレ(4粒))、これは別規格で臨床試験を行ったためと思われ、理解できる。臨床試験を実施していない企業が崩壊の同一性をどうやって確認出来るのか。他の同一性の考察にしても、そのように考察できる根拠が示されていない。
同様に、松樹皮由来プロシアニジンの「コレステ生活」、「LDLコレステロールが高めの方のサプリ」も問題有りだ。ヒハツ由来ピペリンの2品目は臨床試験実施企業が異なった名称で2品目を届け出たものと思われるので問題は無い。サーデンペプチドの2品目はいずれも届出者名が論文中に確認できないので根拠論文著者との関係が不明だ。
消費者庁は“機能性に関する基本情報”(1)機能性の評価方法、3つのうちのひとつ、「最終製品を用いた臨床試験(人を対象とした試験)により、機能性を評価している」にこのような他社の臨床試験論文を根拠資料とするような例を認めているのか?機能性表示食品は届出制なので、消費者庁は届出書類の書式が整っていれば、内容について無審査のようだ。しかし、臨床試験論文の引用でも“臨床試験により機能性を評価している”と認めると、自社で臨床試験を実施し、届出者でもある企業の権利が守られないことになる。臨床試験の実施企業以外が届出者となる申請を審査により除外するか、制限しないで臨床試験論文の引用も認めるならば、医薬品のように後発品は先発品との同等性を示すデータを提出させるような仕組みの導入が必要ではないか。