2015年
8月
10日
月
前回の「抗コリン薬を考える」の最後に、高齢者の認知機能に影響を及ぼす抗コリン作用を持つ薬物については、文献によって食い違いがあるので更に調査の必要があることを述べた。そこで色々と調べた結果、以下の論文を見つけたので紹介したい。
Duran C.E. et al. Systematic review of anticholinergic risk scales in older adults. Eur J Clin Pharmacol. 2013; 69: 1485-1496.
高齢者への不適切な抗コリン薬負荷はしばしば取り上げられているが、その負荷を評価するための各種スケール間には、対象の抗コリン薬や、その作用の強さについて食い違いがみられる。著者らは、(1)抗コリン薬をリストしている、(2)それらの抗コリン作用をグレード分類している、(3)臨床的あるいは実験的な確証があること、の3条件を満たす論文を系統的に調査した。高齢者を対象としない論文は除外した。7論文が選択され、これらの論文でリストされている抗コリン薬の作用の強さ(0[non-anticholinergic]~3[high potency])を比較した。私が2月、6月に紹介したAncelin(2006)の論文は7論文に含まれる。Gray(2015)の論文は2015年なので当然含まれていないが、そもそも抗コリン薬をグレード分類していないので、Duranの基準には合わない。
7論文の比較調査によりグレード3が複数ある薬物、3が1論文でも2が1論文以上ある薬物はhigh potency抗コリン薬とした。3が1論文しかなく、グレード0の論文がある薬物や、他に評価のない薬物はMartindale®により判断した。
結果、47成分がhigh potencyの抗コリン薬と判断された。このうち、我が国で販売されている医療用医薬品は28種、一般用医薬品3種を以下の表にまとめた。表中、薬物名の背景がグレーのセルは、high potencyの判断根拠がMartindale®によることを示す。