2015年
11月
12日
木
2016年度の診療報酬改定をひかえて医療費削減の議論が活発化している。医療費全体の40兆円のうち10兆円を薬剤費が占めることから、後発品の使用割合を増加させる方策(毎日新聞社説2015年11月7日)や調剤報酬の削減(10月30日財務省財政制度等審議会)などの案が打ち出されている。
調剤報酬の削減には、門前薬局の調剤基本料引き下げや、夜間・休日対応実績などの「かかりつけ薬局」の要件厳格化などが含まれているという。この案自体が目指す方向性は従来の延長線上にあり、実効性に疑問はあるものの異議はない。問題は、この様に薬局の形態や実績で調剤報酬に差をつけると、1処方せんあたりの医療費に差が生じて1割負担にせよ、3割負担にせよ、患者の支払い額にも差が生じることだ。「かかりつけ薬局」機能を持つ薬局の技術料を高く評価して、薬局に対しては政策誘導を働かせても、患者については、そうした機能を持たない薬局を選択したほうが支払い額が少ないという逆インセンティブが働いてしまう。従来からあるこの矛盾について、厚労省は、評価を高く設定した薬局では、患者がより良いサービスを受けられる可能性がある対価を支払っていると説明して来ただろうか。残念ながら、そんな話は聞いたことが無い。厚労省は患者に対しては説明を頬被りしてきたに過ぎない。
実際、どの程度の患者がこの矛盾に気づいているかは知らないが、そろそろ根本を変えるべきだ。薬局の評価に差を設けても、患者の負担額は同じとすべきだと思う。その上で薬局の保険請求に対する還付の段階で評価の高くした薬局には優遇分を上乗せすれば十分、調整は可能なはずだ。